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進行性核上性麻痺

進行性核上性麻痺とは

進行性核上性麻痺とは、脳の中の神経細胞が減少してしまう疾患です。
歩きにくいなどの運動障害、認知症、目の動きが悪く下を見にくいなどの眼球運動障害、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状が見られます。

日本では、推計で人口10万人あたり約5人の患者さんがいます。
年齢は50〜70歳代が多いです。
遺伝性はほとんど報告されていません。

進行性核上性麻痺の原因は不明

進行性核上性麻痺では、黒質、中脳、視床下核などの神経細胞が減少し、 異常な構造が現れます。
そして神経細胞内に「タウたんぱく」というタンパク質が異常蓄積します。
このタウたんぱくの蓄積が病気の原因ですが、蓄積してしまう原因がまだわかっていません。

タウたんぱくが関連する疾患でよく知られているものには、アルツハイマー病があります。

進行性核上性麻痺の予後

歩行障害が進行するにつれて転倒して怪我しやすくなり、やがて寝たきりとなるケースが多いです。
発症してから寝たきりになるまでの平均期間は4~5年程度とされています。
しかしあくまで平均であり、患者さんごとに経過は異なります。
その後は麻痺そのものではなく、食物や唾液の誤嚥による肺炎が死因として多くみられます。

また病気の進行にはいくつかの亜型があることがわかっています。
例えば初期に眼球運動障害などを示さない、パーキンソン病とよく似た症状や経過をたどる患者さんもいます。
その場合、抗パーキンソン病薬の効果も一定認められたケースもあります。
病気の進行はゆっくりで、罹病期間が長くなる傾向がみられます。

進行性核上性麻痺は介護保険の特定疾病

多発性硬化症は、厚生労働省の定める「指定難病」です。
そのため、医療費助成制度の対象になります。
受けられる医療費助成は、病気の重症度や毎月の治療費によって異なります。
自分で申請する必要があり、都道府県などの地方自治体に申請します。
認定がおりると「医療受給者証」が交付され、医療費の助成が受けられます。

また進行性核上性麻痺は介護保険が適用される特定疾病でもあります。
そのため40歳以上65歳未満の患者さんでも、自分で申請することで介護保険サービスで助成を受けることができます。

進行性核上性麻痺の症状

進行性核上性麻痺の主な症状として、下記のような症状が見られます。
・運動障害
・認知症
・眼球運動障害
・構音障害(しゃべりにくい)、嚥下障害(飲み込みにくい)

初期:運動障害

転びやすくなったことで病気に気づくことが多いです。
体が動かしづらくなることで姿勢が不安定になり、注意していても転倒してしまいます。
転びそうになっても手が前に出せず、顔や頭を怪我することもあります。

足がすくんで前に出しづらくなる(すくみ足)、歩行がだんだんと速まって止まれなくなる(加速歩行)など、歩行障害も見られます。
これらはパーキンソン病に似た症状です。

認知症

認知症も合併しますが、比較的軽い傾向があります。
転びそうになった時の危険を判断する力が低下したり、物忘れがあったり、質問にすぐ答えられなくなったりします。

しかしアルツハイマー型認知症とは異なり、時間や場所などがわからなくなる見当識障害は軽度なケースが多いです。
また病気に対する深刻感があまりない場合も多く見られます。

眼球運動障害

眼球を上下に動かすことが難しくなります。
特に発症後2~3年で、下を見づらくなる症状が多く見られます。

進行すると左右の運動もできなくなり、正中で固定して動かなくなってしまいます。

構音障害、嚥下障害

口・舌・顎・喉などがうまく動かせなくなります。

進行するとはっきりと発音できなくなり、聞き取りにくい話し方になります(構音障害)。
また食べ物を飲み込みにくくなり(嚥下障害)、むせることが徐々に増えてきます。

さらに進行すると、誤嚥性肺炎などを起こします。
口からの食物摂取が困難になった場合、胃瘻が必要となる患者さんもいます。

進行性核上性麻痺のリハビリ・ケア

進行性核上性麻痺には根本的に治療できる薬がありません。
パーキンソン病の治療薬や抗うつ薬を使用することはありますが、一時的な効果に留まります。

いま残っている機能を最大限に使い維持するためのリハビリ、転倒予防のための筋力維持や訓練が中心となります。

リハビリ

転倒予防のための筋力維持やバランス訓練が中心となります。

手足の関節を動かさないでいると、徐々に自力では関節が動かせなくなってしまいます。
それを予防するため、関節の動く幅を広げる訓練を行います。

また構音障害・嚥下障害を軽減するために、口・舌・喉を動かす嚥下運動や発声運動を行い、運動機能の維持を図ります。

転倒・肺炎予防

リハビリ以外に必要なケアとして、転倒予防・肺炎予防があります。

転倒の多くは、物を取ろうとして手を伸ばしたとき、不安定なものに体重を掛けて体を支えようとしたときなどに起こります。
手を伸ばして取りたくなる物・不安定に置かれた物を片付けたり、普段からよく使う物は届きやすいところに置くなど、環境を整える必要があります。

嚥下障害が出てくると、食べ物を誤嚥しやすくなります。
食事の形態を工夫して、飲み込みやすい食事にします。
必要な場合は経管栄養や胃ろうの導入もします。

また、口腔内の汚れは肺炎の原因になります。
そのため歯磨きは定期的に行います。
自力で痰を出せなくなった際には、適宜痰を吸引することも肺炎予防につながります。

病気が進行して寝たきりになった場合は、体位変換を行い床ずれを防ぎます。

進行性核上性麻痺の介護にあたって4つの注意点

食事について

進行性核上性麻痺は比較的初期の段階から、構音機能や嚥下機能の低下が見られます。そのため、本人の能力に応じてきざみ食やとろみ食など食事形態を変更する必要があります。
また本人の食べるペースを無視して食事を運んでしまうと、焦って誤嚥に繋がるというケースも珍しくありません。食べるペースを乱さないように見守ることも大切です。

衣服の着脱について

進行性核上性麻痺は初期・中期の段階であれば、ある程度本人だけで衣類の着脱ができるでしょう。リハビリのために時間がかかっても、一部サポートを行いながら本人に任せることが大切です。しかしステージが進行すると、体全体が拘縮し寝たきりの状態となるため衣類の着脱は介護が必要になります。

住環境について

自宅で介護を行うにあたって、とくに気をつけなければならないのが転倒です。進行性核上性麻痺は初期の段階から、何度も転倒を繰り返すことが特徴の病気とされています。
近くのものを取る、ベッドから降りるなど何気ない動作が転倒に繋がるため注意が必要です。あらゆる場所に手すりやすべり止めをつける、手を伸ばす必要がある場所には物を置かないなど住環境を整えましょう。

排泄について

進行性核上性麻痺の転倒原因として、意外と多いのがトイレに行く際です。体が動かしづらくなりギリギリまで排泄を我慢し、焦ってトイレに行くため転倒に繋がりやすいとされています。余裕をもって早めに排泄するように介護者が声をかけてあげることが大切です。

進行性核上性麻痺は介護保険が適用されるの?

進行性核上性麻痺は国が定める特定疾患のため、40歳以上であれば介護保険が適用されます。介護保険を利用するためには、国へ申請を行い要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定を受けると、医療費助成制度や訪問介護・デイサービスなどの障害福祉サービス、福祉サービスの利用援助・金銭管理をサポートしてくれる日常生活自立支援などを受けることが可能です。また障害手帳を交付することで、税金の控除や公共交通機関・公共施設などの割引を受けることもできます。

【まとめ】本人も介護者もストレスフリーを心がけよう

進行性核上性麻痺は身体機能の低下だけでなく、 構音障害や記憶障害も見受けられます。円滑なコミュニケーションが難しくなることにより、本人や介護者がうつ状態になるというケースも珍しくありません。

そうならないためには、訪問介護や介護施設を検討するのがおすすめです。サポートの一部をプロにお任せすることで介護者の負担が減り、本人も介護者もストレスフリーで過ごすことができるでしょう。

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