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多系統萎縮症

多系統萎縮症(MSA)とは

多系統萎縮症は死に至る進行性の病気です。
筋肉が硬くなり、運動障害、自律神経障害、循環器の機能不全などが起こります。
英語では「multiple system atrophy」、頭文字を略して「MSA」とも呼ばれます。

遺伝性ではない孤発性が大部分を占めており、30〜40代以降で多く発症します。
平均の罹病期間は5~9年とされていますが、個人差が大きいです。

かつては下記3つのタイプに分かれていると考えられていましたが、今では総称されています。
線条体黒質変性症
オリーブ橋小脳萎縮症
シャイ・ドレーガー症候群

多系統萎縮症の原因

多系統萎縮症の発症原因・メカニズムは、いまだ分かっていません。

症状が現れる仕組みとしては、脳内にある中枢神経細胞内の「グリア細胞(神経の伝達などを行う細胞)」のうち、「オリゴデンドログリア」とよばれる細胞に異常をきたします。
オリゴデンドログリア内に「αシヌクレイン」からなる物質が脳内に蓄積します。
小脳や脳幹、脊髄に蓄積することが多く、蓄積した部位の障害を受けることから病気が発症すると推定されています。

多系統萎縮症の予後

進行性の病気であり、進行するにつれて小脳症状や自律神経障害も加わります。
そのため全体として進行しながら症状が悪化していくケースが多いです。
日本で230人の患者さんを対象とした研究では、発症後約5年で車椅子使用、約8年で寝たきり状態となり、病気の期間は9年程度になるという中央値が発表されています。

多系統萎縮症の医療費補助

多系統萎縮症は、厚生労働省の定める「指定難病」です。
そのため、医療費助成制度の対象になります。
受けられる医療費助成は、病気の重症度や毎月の治療費に応じて、都道府県などの地方自治体に申請します。
認定がおりると「医療受給者証」が交付され、医療費の助成が受けられます。

他にも40歳以上の患者さんは介護保険の対象になります。
要介護度や収入に応じて介護に必要な費用の一部が助成されます。
要介護認定を受け、介護保険を申請する必要があります。

多系統萎縮症の症状

大脳、小脳、脳幹、脊髄の障害に応じた症状があらわれます。
特に小脳の障害に起因した歩行障害の発症や、パーキンソン病に似た症状から現れることが多いです。

自律神経障害

排尿障害と起立性低血圧がよく見られます。
特に排尿障害は最も頻度が高く、頻尿、尿失禁から始まります。
進行期には、残尿や尿が全く出せなくなる場合もあります。

起立性低血圧も合併しやすい症状です。
仰向けに寝た状態での血圧は正常でも、立ち上がった直後に血圧が下がり、立ちくらみ・失神などを起こします。
入浴後、食後、排泄前後などに症状が出やすいため、注意が必要です。

その他に発汗の低下、体温調節障害といった自律神経症状もあります。
特に体温調節に障害があると、暑い部屋にいるだけで体温が高くなってしまうこと(うつ熱)があるため注意してください。

パーキンソン症状(錐体外路症状)

振戦(手足のふるえ)、動作がゆっくりになる、固縮(四肢や体幹が固くなる)、発声の異常(小声、単調な話し方)などのパーキンソン症状が出ます。

パーキンソン病との区別は初期には難しく、パーキンソン病と診断されてすでに治療を開始している患者さんもいます。
その場合は薬剤治療の効果がパーキンソン病より乏しく、進行がやや早いという特徴があります。
そのようにして途中で診断が見直され、最終的に多系統萎縮症(MSA)と診断されることがあります。

小脳性運動失調

小脳性運動失調では、構語障害や歩行の不安定さが現れます。

構語障害では、ろれつが回らない、うまく言葉を発せないといった症状が見られます。

歩行時にはゆらゆらと身体を揺らしながら歩いたり、足を左右に広げながら歩くなどの特徴があります。
進行すると転倒しやすくなるため、注意が必要です。

多系統萎縮症の介護にあたって4つの注意点

食事について

多系統萎縮症は筋緊張の亢進や球麻痺などにより、嚥下機能が徐々に低下します。日々嚥下機能を観察し、食べやすい大きさや硬さに調整をしたり、水分にとろみをつけるなど誤嚥を予防することが大切です。
また嚥下機能が更に低下し、食事が難しい場合は医療処置を必要とするケースもあります。医療処置が必要かどうかは、病院で嚥下機能の検査を行って判断します。

衣服の着脱について

多系統萎縮症は症状が進行するにつれ、衣類の着脱にも介護が必要になります。
前開きの服やウエストがゴムのズボンを選択すると着脱の介護がしやすいでしょう。また前開きの服はボタンやジッパーで止めるものでなく、マジックテープで止めるものがおすすめです。

住環境について

多系統萎縮症の介護に適切な住環境は、症状の進行度によって大きく異なります。都度、医師と相談しながら一人ひとりに合わせた住環境を整えましょう。
住環境を整える方法としては、転倒を予防するために手すりを取り付ける、外傷を防ぐために部屋を整理するなどがあげられます。他にも、歩行失調や姿勢保持障害に合わせて福祉用具等の導入も検討しましょう。

入浴について

多系統萎縮症の介護にあたって、とくに事故が起きやすいのが入浴時だとされています。入浴の介護は十分に気をつけて行いましょう。
例えば、浴室の床は水や石鹸などで滑りやすくなりがちです。床にバスマットやすのこなどを設置し、滑らないように工夫しましょう。また、可能であれば浴室や脱衣所の手すりをつけるのもおすすめです。

多系統萎縮症は介護保険が適用されるの?

多系統萎縮症患者は国が定める特定疾患です。そのため40歳以上であれば、介護保険が適用されます。介護保険を適用するためには、申請し要介護認定を受ける必要があります。

申請が通ると介護に必要な費用の一部が助成されたり、様々なサービスを受けることが可能です。サービスの例としては、訪問介護やデイサービスなどの居宅サービス、介護保険が利用可能な施設への入所サービス、車椅子や電動ベッド、移動用リフトなど福祉用具のレンタルサービスなどがあげられます。

【まとめ】進行に合わせて訪問介護や介護施設の利用も検討

多系統萎縮症患者は一人ひとりの進行状況や進行速度に合わせて必要な介護が異なるため、一概にはいえません。
しかし、一般的に発病から5年前後で車椅子を使用しながら、介護が必要な状態になるとされています。発病後はステージが軽度な段階から、将来を見据えて準備しておくことが大切です。
症状が進行すると運動機能が低下し、日常生活のあらゆることに介護が必要となります。進行に合わせて訪問介護や介護施設などプロの力を借りることで、本人とご家族が余裕を持って生活することができるでしょう。

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