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重症筋無力症

重症筋無力症(MG)とは

重症筋無力症とは、自己免疫疾患のひとつです。
全身の筋力低下や易疲労感が主な症状です。
厚生省の特定疾患(難病)に指定されています。
英語では「myasthenia gravis」と呼ばれることから「MG」と略されることもあります。

国内の患者さんの数は、2018年の全国疫学調査によると約3万人です。
10年前と比較してほぼ2倍になっており、患者数は増加傾向にあります。
男女比は1:1.15で女性にやや多く、50歳以上に発症した患者さんが6割以上を占めています。

重症筋無力症(MG)の原因

重症筋無力症では、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体によって破壊されてしまいます。
筋肉側の受容体が破壊されると、神経から筋肉に信号が伝わらなくなります。
その結果、筋力低下が起こります。

自己抗体に破壊されてしまう筋肉側の受容体のうち、アセチルコリン受容体が全体の約85%を占め、最も頻度高く確認されています。
次いで筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)が全体の数%程度を占めます。
全体の10%未満の患者さんでは、上述のどちらも陽性ではありません。

なぜこのような自己抗体が体内で作られてしまうのか、その仕組みは現在わかっていません。
また遺伝性は確認されていません。

重症筋無力症(MG)の予後

重症筋無力症(MG)は自然に治る病気ではありません。

しかし早期診断・早期治療によって、予後は比較的良好です。

約半数の患者さんは、発症後でも日常生活を送ることができています。
多くの患者さんは治療を継続しますが、完全に治療が不要になる人も6%程度います。
一方で、約10%の患者さんは治療による改善があまりみられません。

重症筋無力症(MG)は公的補助が受けられる

重症筋無力症(MG)は難病法の定める指定難病に指定されています。
そのため、所得に応じて負担した医療費の一部が助成されます。
助成を受けるには、自ら保健所に申請する必要があります。
診断基準と重症度分類をみたすと、特定医療費(指定難病)受給者証が交付されます。

他にも65歳以上であれば、介護度に応じて介護保険制度も利用できます。

重症筋無力症(MG)の症状

症状は、主に全身の筋力低下と易疲労性が出現します。
眼瞼下垂、複視などの眼の症状も起こしやすいです。
嚥下(飲み込み)が上手く出来なくなる場合もあります。
重症化すると呼吸筋の麻痺による呼吸困難を起こすこともあります。

目の症状

重症筋無力症(MG)は、まぶたがたれてくる眼瞼下垂、物が二重に見える複視など、眼の症状で始まるケースが多いです。
眼の症状だけが現れている場合を「眼筋型」と呼びます。

口や咽喉が動かしにくい

最初は眼や首・肩周りの筋肉から症状が出るケースが多いです。
目以外に症状が広がった状態を「眼筋型」に対して「全身型」と呼びます。
早期の治療を行えば約30%は眼筋型に留まりますが、発症から2年以内に眼筋型の50%以上が全身型に移行していきます。

口や咽喉の動きが悪くなり、飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりします。
患者さんによっては、しゃべりにくさを感じることもあります。

顎の筋肉も疲れやすくなり、長く噛んでいることができなくなる場合もあります。
頸の筋力が低下して首を支えられず、頸が前や後ろに倒れてしまう「首下がり」という状態を起こすこともあります。

手足の症状

症状が拡がってくると、全身の手足の筋力低下や易疲労性が現れます。

手足の筋肉に繰り返し力をいれると、普通の人よりも疲れやすくなります。
力がはいりにくい状態は、休息により改善するケースが多いです。

午後〜夕方に症状が出やすい

朝や午前中より、午後から夕方の方が症状が出やすいという特徴があります。
日によっても疲れやすさに差があります。

呼吸症状

重症化すると、横隔膜など呼吸筋にも筋力低下や易疲労性が見られます。
そこまで進行すると呼吸困難になりやすく、人工呼吸器などの呼吸管理が必要になります。
この状態は「クリーゼ」と呼ばれています。

重症筋無力症(MG)の「重症」という名前は、かつては重症化してクリーゼを起こしやすく、死亡の原因として恐れられていたためです。
現在では、医療の進歩により重症の呼吸障害まで進行するケースは減少しています。
しかし今でもクリーゼの可能性自体はあるため、早期治療や日常生活での注意が必要なことには変わりありません。

重症筋無力症(MG)患者を介護する際のポイント

①誤嚥に注意する

重症筋無力症(MG)患者の症状には筋力の低下に伴い、口や咽頭の動きも悪くなります。食べ物が飲み込みにくくなったり、咀嚼しにくかったり、またむせやすくなるケースもあります。
誤嚥すると、誤嚥性肺炎を患うなど別の病気になる可能性もあるため、特に食事を用意する際は注意しましょう。

②無理をさせない

全身の筋力低下のため、特に手足の筋肉に繰り返し力をいれることで、疾患がない人にくらべると疲労しやすくなりがちです。
また、朝〜昼よりも、夕方の方が症状が強くでやすい人もいます。無理をせずにゆっくりと、休憩することを促すなどしましょう。

③感染症対策を行う

風邪や体調不良など、体力を消耗し疲労感を残すことで、重症筋無力症の症状を悪化させる場合があります。日頃より免疫が下がらないように、気をつけながら併せて感染症対策をしっかり行いましょう。

④コミュニケーションのケアを行う

全身の筋力が低下するため、口や顔の筋力も低下することで、口を開けることや会話することもしんどいと感じる患者さんもいます。その場合は無理をさせず、筆談ツールや、コミュニケーションボードを活用し意志の疎通を図りましょう。

症状が進行した場合は、介護サービスの利用も検討しましょう

重症筋無力症(MG)は早期発見・早期治療によって予後は比較的良好と言われており、約半数の患者が、発症後でも日常生活が送れていると言われています。
しかしながら、治療を行なってもなかなか改善が見られない人もいます。ゆっくりと進行していく疾患のため、今は日常生活を送る際に不自由がなくても、今後家族の介護やサポートが必要となる場合があります。特に入浴などの介護が必要となった場合は決して無理をせず、周りにサポートを求めたり、介護サービス等を利用することも検討してくださいね。

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